ベクトルと物理(3)

では、実際に物理の問題を解いて、ベクトルの考えが使用されている例を見てみよう。


地上からボールを投げたとしよう。そのボールが地上に落ちた地点が投げた場所からどれだけ離れているかを計算してみよう。

ボールは地上からθの方向に投げられ、初速はv0とする。(図.1)

図.1


ニュートンの運動の3法則から、ボールの運動はボールにかかる力に影響される。もし、ボールに力が加わらなければ、ずっと地面からθの方向に等速直線運動する。しかし実際には重力が加わるので(空気抵抗なども考えられるがここでは無視し、重力だけが加わるとする)、地面に落ちるわけである。ここで、鉛直上方向を正とし、重力加速度をg、ボールの質量をmとすれば、ボールにかかる重力は-mgで表される。


この問題を解くためにはどうすれば良いであろうか。運動に関する公式はなにかあったであろうか。ここで、等加速度直線運動の公式が思い当たる。


等加速度直線運動の公式

ここで、vは速度、yは変位、v'は初速、aは加速度、tは経過時間である。


これらの式をどう当てはめれば良いであろうか。

aの加速度であるが、加速度はボールにかかる力の方向にかかることになる。図.1のように、ボールにかかる力は重力のみで、それは鉛直下方向にかかっている。逆に水平方向には力が加わっていないことが分かる。

そこで、力のかかる方向とかからない方向に分けて考えると都合がいい。

ここで数学のベクトルの考え方が使われているのである。


初速v0をベクトルとして扱って、x軸方向、y軸方向(鉛直上方向)に分けて考える。(図.2)

図.2


次に水平方向(重力が加わらない方向)と、鉛直方向(重力が加わる方向)で分けて(13)式、(14)式を考えよう。


・水平方向(x軸方向)

水平方向には力が加わらないので、(13)式、(14)式に現れるaは0である。

また図.2から分かるように、水平方向の速度はv0cosθ。

よって、

ここで、(15)式のvxはx軸方向の速度である。

θは初速で決まる定数であり、この式は等速直線運動の公式に他ならない。

次に鉛直方向について考えてみよう。



・鉛直方向(y軸方向)

図.2から分かるように、鉛直方向の速度はv0sinθ。

またこのとき、ニュートンの運動の3法則の運動の法則から

ma = F = -mg

→ a = -g

であるから(13)式、(14)式は、

ここでvyはy軸方向の速度である。

次にどんな時に地面に落ちたと言えるだろうか。それはyが0の時である。

したがって、

※t=0なら上の式変形で両辺を割ることが出来ないが、

この場合はt=0ではないのでtで割ることが出来る。

地面に落ちるまでにどこまで飛んだかは水平方向に飛んだ距離であるから、

(19)式を(16)式に代入すれば良い。

したがって、

これが地面に落ちるまでに進んだ距離である。


問題を解く際に、運動の方向を分解することで、等加速度直線運動の公式から

その後の運動を理解出来ることが分かった。

このように運動の方向を分解して考える裏にはベクトルの概念が用いられている。

またベクトル以外でも数学の概念が物理学の中で用いられており、

物理を学ぶ上で数学の基礎的な知識は必要となっているのである。

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